生誕100周年で

 今年8月22日は訒小平生誕100年に当たる。7月末から、中国全土で様々な記念イベントが続々と開催され、マスコミでは「訒小平ブーム」が巻き起こっている。

 中国中央テレビ(日本のNHKにあたる)は8月1日から、ドキュメンタリー番組『軍人・訒小平の生涯』を8回わたって放送する予定だ。訒氏は政治家としてのイメージが強いが、30、40年代は対日ゲリラ戦から大掛かりな国共内戦まで前線の指揮を執り続けた。華々しい軍歴を持つ将軍でもあった。また、85年に人民解放軍の近代化を目指して百万人の兵員削減を断行するなど、中国の軍事改革と国家戦略にも大きな影響を与えた。中央テレビの企画は、こうした戦略家としての一面をクローズアップするものだ。

 同局は訒氏が死去した97年2月にもドキュメンタリー番組『訒小平』を放映し、27.1%の高い視聴率を獲得した。関係者によると、当時8百万人民元(約1億円)の制作費を投じた。放映後に地方のケーブルテレビ局に放送権を売り、続いて発売になったビデオも4万セットが売れ、大きな収益を得たという。今年は訒氏の生誕100年だけあって、番組への期待も高いだろう。

 また、上海の地方紙は、7月28日に開幕した「上海書籍展覧会」では、全国の出版社から数十種類もの訒小平関連新刊が出品され、展覧会の目玉となっていることを報じた。

 訒小平ブームは、もはや政治的な意味だけではなく、市場経済の実益をももたらしているのだ。「豊かになれるところから豊かになる」と言って市場経済を導入した訒氏だったが、これも「遺産」のひとつと言えよう。