旧日本軍の遺棄化学兵器発見で


 中国・黒竜江省チチハル市郊外で5月下旬、旧日本軍が遺棄した毒ガス砲弾が新たに発見された問題で、政府は発掘回収のため30人規模の作業チームを来週にも現地に派遣する方針を固めた。中国での遺棄化学兵器について、日本から発掘回収チームを緊急に派遣するのは初めて。中国の対日世論に配慮し、早期の対応が必要だと判断した。

 内閣府遺棄化学兵器処理担当室によると、チームは防衛庁OBなど化学兵器の専門家らで構成。毒ガスが入った砲弾を掘り出して密封し、保管庫に運び込む作業を数週間かけて行う予定だ。

 今回、チチハル市郊外の民家の敷地から見つかった旧日本軍の化学兵器は、びらん剤(マスタードガス)や嘔吐剤など。52発が確認されたが、なお数百発が埋まっている可能性があるとされる。現場は封鎖され、付近の住民は避難している。国営新華社通信によると、同市内で旧日本軍の化学兵器が入ったドラム缶も見つかり、体に異常を訴える人がいるという。

 同市では昨年8月、建設現場から旧日本軍の毒ガスが漏れ出し、1人が死亡し43人が負傷。中国国内で日本への反発が広がった。中国政府は「現地住民に不安が広がり、素早く対処しないと再び反日世論に火がつきかねない」として、発掘回収への協力を日本政府に求めていた。

 中国に残された遺棄化学兵器は日本側の推定で70万発。化学兵器禁止条約で日本は遺棄化学兵器の処理の義務を負い、00年から日本が主導する形で調査や発掘回収を進めている。今年4月には、吉林省に処理施設を建設することで日中両政府が合意した。