絶滅危惧種の細胞・遺伝子を保存


 ツシマヤマネコヤンバルクイナなど絶滅の恐れがある哺乳(ほにゅう)類、鳥類、魚類の細胞や遺伝子を50年以上保存する施設「環境試料タイムカプセル棟」が、独立行政法人・国立環境研究所(茨城県つくば市)に完成し、5月31日公開された。これらの細胞をもとに将来、生命工学技術による絶滅種の復元や、絶滅原因の研究・解明に取り組む。

 施設には、液体窒素で零下150度に冷やせる保存用タンク14基が設置されている。生きた個体から採取した皮膚の組織や、死体から採取した臓器や生殖細胞が保存される。総工費は約17億円。

 保存対象は「日本の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータブック)」に記載された200種以上の鳥類や哺乳類、魚類。緊急性の高いものから順次保存される。野生種が絶滅したトキや、絶滅危惧(きぐ)種のツシマヤマネコリュウキュウアユの精子や臓器の細胞などがすでに凍結保存されている。ヤンバルクイナライチョウワシミミズクの組織採取・培養も始まっている。

 哺乳類の復元については、クローン技術の応用が考えられている。鳥類は、近縁種の卵の中に絶滅種の生殖細胞を注入する方法が使えるとみられている。魚類でも似た方法が使われる見通しだ。

 同施設ではこのほか、各地で採取したエイやムール貝の仲間の組織、母乳、大気粉塵(ふんじん)など環境試料も凍結して保存する。環境汚染の変化を長期間、追跡研究するのに役立てる。


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