阪大チーム、世界初


 長さ1センチの極細ガラス針にレーザー光をあてて強い電子ビームを作ることに世界で初めて成功したと、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターのグループが21日、発表した。電子や原子核にエネルギーを注入して運動速度を高める「加速」技術の一つ。放射線の代わりにがん組織を焼いたり、半導体を微細加工したりする小型装置の開発につながると期待される。

 同センターの北川米喜(よねよし)・助教授らの研究で、5月21日付の米物理学専門誌にも掲載された。

 直径0.06ミリの穴が通る針を用意。穴の一方から強力なレーザーを一瞬照射したところ、もう一方から1億電子ボルトという高エネルギーの電子ビームが飛び出した。従来は長さ10メートルの装置がなければ、生まれなかった。レーザーの作用で針内に電子と原子核がばらばらになって動き回るプラズマができ、プラズマ内部の電子の一部を加速させたらしい。ガラス針なので弱く、1回の照射で壊れたが、今後、金属などへの置き換えを検討する。

 欧米では真空容器に気体を注入してレーザーをあてる別の手法ではすでに電子ビームが生まれている。しかし今回のような針型の装置の方が治療や加工の対象にビームを導きやすく、実現が待たれている。

 北川さんは「ビームをさらに絞り込むなど、実用化にはなお多くの壁を越えなければならない」と話している。


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