ソフト開発責任

 ファイル共有ソフトWinnyウィニー)」をめぐる著作権法違反幇助(ほうじょ)事件で、京都地検は三十一日、ソフトを開発し、不特定多数の違法コピーを手助けしたとして同法違反(公衆送信権の侵害)幇助罪で東大大学院助手、金子勇容疑者(三三)を起訴した。ファイル共有ソフトの開発者が起訴されるのは初めて。

 Winnyは違法コピーの温床といわれる一方で、従来のファイル共有ソフトより利便性を飛躍的に高めたすぐれたソフトとの評価もある。ソフトが悪用された際の開発者の責任はどこまで問われるのか、前例のない公判請求が今後も論議を呼ぶのは必至だ。

 京都地検Winny開発が著作権侵害の蔓延(まんえん)を助長し、著作権保護の観点に照らしても悪質と判断。さらに摘発を逃れる目的で二百三十六回もソフトの改良を加えた事実が「違法コピーを促した確定的な故意に当たる」とし、幇助罪成立の根拠としたとみられる。

 これまでの調べでは、金子被告は平成十四年五月に自分のホームページでWinnyを無料で公開し、不特定多数の利用者に配布。昨年九月、群馬県高崎市の風俗店従業員(四一)=同法違反罪で公判中=ら二人が、映画や市販のゲームソフトを無断で複製し、ネット利用者に送信できるようにした著作権侵害を手助けしたとされる。

 金子被告は逮捕前の昨年十一月、Winny利用者による著作権法違反事件で京都府警の取り調べを受けた際、「コピーが簡単にできるネット社会を変えるには著作権侵害を蔓延させるしかない」などと話し、自分のホームページにも同様の趣旨の記述があり、地検はこうした挑発的な態度も悪質と判断したとみられる。

 しかし、金子被告は逮捕後の先月十八日、京都地裁で開かれた拘置理由開示の法廷で「Winnyを犯罪に使えと言った覚えはない」などと証言、著作権違反幇助の事実を否認しており、公判でも起訴事実について全面的に争うとみられる。(産経新聞