匿名性の高さから一気にユーザが増加したWinny

 P2Pファイル共有ソフトである「Winny」を介して感染を広げるワーム「Antinny」が拡大しており、さまざまな方面に影響を及ぼしている。Antinnyは、ぬるぽワーム、キンタマなどの別名を持ち、オリジナルであるAntinny.Aは昨年の8月に発見されている。「Anti-Winny」が語源とされているように、Winnyをターゲットとするワームだ。

 Winnyはご存じのようにインターネット経由でファイルを共有するためのソフトで、サーバを介さず直接PC同士で通信を行う完全なPeer-to-Peer接続を実現している。これまでファイル共有ソフトというと、Napsterがメジャーだった。しかし、Napsterのシステムではファイルリストを記録したサーバが存在し、リストを参照して端末となるPCにアクセスする仕組みだったため、完全なP2Pとはいえなかった。

 その後、GnutellaWinMXが登場し、これらはサーバを介さずにPeer-to-Peer接続を実現していた。ユーザはソフト上でキーワードによる検索を行い、検索結果から任意のファイルをダウンロードできる。ファイルを持っているPCに直接接続するためファイル容量の制限がなく、サーバ・クライアント型ネットワークでは難しい大容量ファイルのダウンロードも可能にした。

 もちろん、このようなP2Pファイル共有ソフトが台頭したのはブロードバンド接続が広く普及したことが背景にある。高速での常時接続が可能になったため、検索結果から目的のファイルのダウンロードを設定しておけば、PCの前にいなくても大容量ファイルを勝手にダウンロードしてくれる。

 しかし、これらのP2Pソフトの場合はダウンロード依頼があったことをユーザに知らせる機能があり、ユーザはダウンロード依頼を断ることができた。また、リクエストを送ったユーザが公開しているファイルリストを確認することもできたため、「ファイル交換ソフト」の傾向が強かった。ファイルを提供する分、提供する側も別のファイルをダウンロードするという駆け引きが存在したのだ。

 Winnyでは、アップロードやダウンロードのリンク数は表示されるが、誰がどのファイルをやり取りしているかは暗号化されていたため、ユーザには分からない。ほぼ完全な匿名性を実現していた。この匿名性がWinnyを一気に普及させたひとつの要因であることは間違いない。Winnyは文字通りの完全なファイル共有ソフトだったわけだ。

 大容量ファイルを自らの素性を明かすことなく入手できるため、Winnyを始めとするP2Pファイル共有ソフトは一気にユーザを拡大した。ユーザの増加のためトラフィックが増し、帯域制限を行うISPも少なくなかった。しかし、帯域制限はポートによる制御だったため、ソフト側でポート設定を変更すれば意味のない対策でもあった。