ハエも老化で物忘れ 都神経研が研究


 老化で物忘れがひどくなるのはハエも同じ――こんな研究結果を、東京都神経科学総合研究所の斉藤実・主任研究員が昨年12月4日付の米科学誌ニューロン」に発表した。1〜7時間ほどの「中期記憶」の能力が衰えており、人の老化による記憶力の衰えや痴呆症の解明に、ハエでの研究が役立つかもしれないという。

 2種のにおいを用意して、ショウジョウバエを入れた装置の中に一方のにおいを充満させた時には電気ショックを与え、他方のにおいの時は与えないという方法で、においを学習させた。

 そして30分後〜7時間後、ハエがどちらのにおいの方へ移動するか実験し、においの記憶がどの程度続くか調べた。

 記憶を保っている確率を示す指標は、生後1日、10日などの若いハエだと、学習直後が90ポイント近くで、3時間後でも40ポイントを保ち、忘却曲線は緩やかだった。一方、生後30日以上の「晩年」のハエは、学習直後が約70ポイントで、しかも1時間後には20ポイントに急落した。

 ハエの記憶には、短、中、長期記憶など4種類ある。老ハエの忘却曲線は、このうち中期記憶に関係する遺伝子を欠いたハエのパターンと一致した。

 斉藤さんは「さらにネズミなどでも、老化と記憶力の低下の関係を解明したい」と言う。

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