1次元金属は伝導性異なる 


 日本人2人目のノーベル物理学賞受賞者、朝永振一郎博士が53年前に予言した特殊な状態が、微細な筒状の炭素結晶「カーボンナノチューブ」で起きていることを、東京都立大、広島大などの研究グループが確認した。

 朝永博士は1950年の論文で、長さだけで幅や厚さを持たない1次元の金属中では、電子が通常の金属とは全く違う振る舞いをすると予言していた。長い間、こうした金属は非現実的とされてきたが、近年、ナノメートル(ナノは10億分の1)級の超微細加工が可能になり、博士の予言に近い現象の起きる物質が次々に見つかってきた。

 カーボンナノチューブもそのひとつで、電子が筒の軸方向にしか動かない1次元金属とみられている。石井広義・都立大助教授らは、広島大の放射光装置で強い光をカーボンナノチューブに当て、チューブ上の電子の状態を調べた。その結果、通常の金属とは逆に、極低温になると電気抵抗が急激に大きくなり、電気が流れない絶縁体になるなど、これまで調べられた物質中、朝永博士の予言が最もよく成り立つ物質だと分かった。

 カーボンナノチューブは飯島澄男・名城大教授が発見した物質。石井さんらは「ナノチューブの筒内に別の物質を入れると超微細な半導体がつくれる」などと述べ、ナノテクノロジーに新たな可能性を開く手がかりになるとみている。

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