楔形文字の文書50点発見 日本調査隊、シリアで

 シリア北東部のテル・タバン遺跡で、日本のシリア・テル・タバン発掘調査隊(隊長・沼本〈ぬもと〉宏俊国士舘大助教授)が先月、約3100年前の楔形文字が刻まれた粘土板文書約50点を発見した。日本の調査隊が、一度にこれほど大量の文書を見つけたのは初めて。文書はシリアのダマスカス博物館で保存・修復中で、この夏にも日本人研究者によって内容が解読される。

 沼本助教授は84年、日本人として初めて楔形文字が刻まれた粘土板をイラクで発見、これまでに粘土板や碑文など約70点を発掘している。イラク国境近くでの発掘は、「武装テロの危険など治安が心配で、緊張の連続だった」という。

 新発見の50点は6〜7センチ角ほどで、中には粘土製の封筒の中に入ったままの文書もあった。同隊は97年から調査を続けており、これまでに円筒形碑文片9点と粘土板文書片1点を発掘している。

 見つかった場所は、メソポタミア文明を築き、世界最古の帝国のひとつとされるアッシリアの地方領主の宮殿跡。アッシリアの西方進出の拠点である地方都市「タビテ」の宮殿だった可能性が高いと考えられている。

 粘土板文書は行政文書とみられ、古代帝国の統治の実態を解明する手がかりになると期待される。遺構床面からは、宮殿が紀元前12世紀中頃に建設されたことを示す銘文も見つかった。

 アッシリアは紀元前2000年ごろから同609年まで、チグリス川中流域を中心に発展した軍事国家。紀元前8世紀にはペルシャ湾岸からエジプトまで征服し、全オリエントを統一する世界帝国を築いた。強力な中央集権システムは、発見された粘土板文書の時代につくられたとみられている。

 解読にあたる山田重郎筑波大助教授(アッシリア学)は「アッシリアは多民族支配をし、富を中央に集中させる複雑な官僚機構をもった最古の帝国のひとつ。発見された文書は、その統治のシステムを地方から裏付ける貴重な資料として期待できる」と話している。

  • 楔形文字文書 楔形文字が刻まれた古代オリエントの文書は、粘土板や碑文で約50万点見つかっている。アッシリア関係は数万点あり、文字の解読は19世紀後半から20世紀にかけて飛躍的に進んだ。ただ、文書の発見は首都が置かれたイラク北部に集中しており、紀元前12世紀以前の地方都市の遺跡から行政文書などが見つかるのは珍しい。


中卒やらDXけんちゃんやら

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