日本人初、BSE感染 英国渡航歴の男性死亡

 BSE(牛海綿状脳症狂牛病)がヒトに感染したのが原因とされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の疑いのある五十代の男性患者=死亡=が見つかり、厚生労働省は四日、専門家らによるサーベイランス委員会と厚生科学審議会の専門委員会を開催、関係者によると、専門委はこの患者が変異型ヤコブ病を発症したとの確定診断を下した。国内で変異型ヤコブ病の症例が確認されたのは初めて。男性は一九九〇年前後に一カ月以上、発症例が圧倒的に多い英国への渡航歴があったという。

 これに関連し、尾辻秀久厚労相は四日昼、国会内で記者団に対して「人から人に感染する心配はないので、国民のみなさんは安心してほしい」と述べた。

 ヤコブ病は、硬膜移植が原因の「医源性」や、原因不明で約百万人に一人の割合で発生する「孤発性」などの症例が以前から確認されている。これに対し、変異型ヤコブ病は、一九九〇年代からBSEの多発した英国を中心に発生。英国保健省によると、同国内では今年一月までに疑わしい症例の四十二人を含めて百四十八人が死亡し、同月現在で五人の患者が生存している。

 また、世界保健機関(WHO)などのまとめによると、英国以外では二〇〇三年十二月現在、フランスで六人、米国、カナダ、アイルランド、イタリアで各一人(いずれも死亡)の変異型ヤコブ病の症例を確認。このうち、米、カナダ、アイルランドの患者は、英国でBSEが流行した一九八〇−九〇年代に、同国内に居住していた。

 クロイツフェルト・ヤコブ病は脳に異常なタンパク質(プリオンタンパク)が蓄積することで脳神経細胞の機能が障害を受け、脳に海綿状の変化が出現する。原因はプリオンと呼ばれる感染因子であることがわかっているが、治療法はまだなく、発病すると数年以内に全身衰弱、呼吸麻痺、肺炎などで死亡する。

 BSEに感染した牛の肉を食べることで感染するとされ、英国で1996年に初めて確認された。食肉後、潜伏期間が数年以上から数十年あるとみられる。従来型のヤコブ病の発症例は高齢者に集中しており、30歳未満での発症はほとんどないのに対し、新型ヤコブ病では、死亡年齢の中間値が28歳と若いのが特徴。患者が発する脳波なども従来型と新型では異なるが、死後に脳の病理検査を行わないと確定的な診断は困難。