英語の講演も 新潮社

決定版 三島由紀夫全集〈41〉音声(CD)
三島由紀夫
新潮社 (2004/09)
おすすめ度の平均: 5
5 ウホッ!いい男の声!!
5 内容について


 作家・三島由紀夫(1925〜70年)の貴重な肉声がCD化され、文学全集の1巻として刊行された。CDは全7枚で収録は計約7時間に及ぶ。作家としての歩みを英語で語った外国特派員向けの講演、日本の防衛政策についての発言、代表的な戯曲「わが友ヒットラー」の朗読など、音源が新発見され、初めて世に出るものもあるという。文学全集の1巻がCDという形態は極めて珍しく、新しい試みといえそうだ。

 全集は新潮社の「決定版三島由紀夫全集」の第41巻(税込み6090円)。本の形をした箱を開くと、CD7枚が収められている。

 ユニークなのは66年4月、日本外国特派員協会で行われた講演。ユーモアを交えた流暢な英語で、聴衆の特派員らの笑い声も入っている。質疑応答も英語で、三島が英語に驚くほど堪能だったことが分かる。

 講演のテーマは「私はいかにして日本の作家となったか」。川端康成の推薦で作家デビューしたことや、太宰治本人に直接「僕は太宰さんの文学は嫌いなんです」と語ったエピソードなどを紹介している。

 防衛政策についての講演は70年9月のもの。新潮社がこの全集を編集している過程でテープの存在が初めて分かったという。「我が国の自主防衛について」との題で、三島の政治的な思考が分かる内容だ。

 「わが友ヒットラー」の朗読は三島が率いた「劇団浪曼劇場」の公演のために、三島が自ら「本読み」をしたもの。役者の参考になるよう役者の前で行われるのが普通だったが、三島の都合に合わせたため、役者が集まらず、テープに録音したという。三島が登場人物の役柄によって声色を変えて読んでおり、作者による「作品解説」的な意義がありそうだ。

 新潮社の編集担当者は「三島氏は生前、全集に何から何まで入れて欲しいと希望していた。その意思に沿うものだ。今まで出版社には肉声を全集に入れる発想がなかった」という。

 文芸評論家で三島由紀夫文学館館長の佐伯彰一氏は「文学全集の1巻がCDというのは私の知る限り、初めての試みだと思う。三島さんは座談の名手であり、その話しぶりを聞けることは三島研究の上でも意義深い」と話している。

(09/25 08:30)



ちなみにライブのオープニングは「テレビジョン」の「marquee moon」

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