書店に若者、市場に活気

 現在、「世界の中心で……」は日本の作家の小説としては過去最大の306万部、「バカの壁」は新書としては過去最大の353万部。綿矢りさ「蹴(け)りたい背中」は芥川賞受賞作としては28年ぶりに100万部を超え、村上龍13歳のハローワーク」もミリオンセラー入りした。いずれもまだ売れ続けている。

 出版科学研究所が25日発表した統計によると、出版の推定総販売金額は1〜3月期で前年同期比2.2%増の6243億円。4月は前年同月比4%増の1869億円で、内訳は書籍が755億円(3.8%増)、雑誌が1113億円(4.2%増)だった。

 出版市場は、96年の2兆6563億円をピークに縮小を続けてきた。昨年は全月で前年割れとなり、2兆2278億円にとどまった。

 同研究所では「現在のプラス成長はメガヒットの効果。話題性でこれまで書店に来なかった若い層を呼び込み、市場を活性化している。まだ本格回復とは断言できないが、今年はプラスに転じる可能性が強い」という。

 「世界の中心で……」は、恋人の死を思い続ける純粋さで「冬のソナタ」に通じる純愛ブームを作った。「蹴りたい背中」も、思春期のさわやかさが特徴の一つ。文芸評論家の池上冬樹さんは「生々しい情報があふれかえるなかで、セックスシーンがない清潔な物語が新鮮に映った」とみる。「バカの壁」は、コミュニケーションに不安を持つ現代人の心理をユニークなタイトルですくい取った。

 ベストセラー本の分析で知られる評論家の井狩春男さんは「4作とも短く、すぐに読めて、ユニークというベストセラーの法則を満たしている。ただ、これほど売れるのは、ベストセラーを手に入れ、自分は時代に遅れていないと確認しているから。売れている本が売れるんです」と話す。

バカの壁
バカの壁
posted with amazlet at 05.06.12
養老孟司
新潮社 (2003/04/10)
おすすめ度の平均: 2.72
4 バカの壁は誰もが持ってる、ブレイクスルーの壁なのか?
3 視点と程度!!
5 21世紀には、二元論で『バカの壁』を乗り越えよう!