medicine 千葉大教授ら仕組みを解明


 心不全を招く心臓の異常は、心筋細胞の表面にあるホルモン受容体の活性化が重要な引き金と考えられているが、血行不良などで心筋の負荷が増えただけでもこの活性化が起きるらしいことを小室一成・千葉大教授(循環器病学)らが突き止めた。活性化を抑えられれば、心不全全般の発症予防に道が開けそうだ。

 ホルモンとホルモン受容体は鍵と鍵穴のような関係で、通常はホルモンが受容体と結合することで受容体が変形・活性化し、次の生理反応を起こす。小室さんらが調べたアンジオテンシン2受容体は、心筋梗塞(こうそく)や高血圧になるとつくられるアンジオテンシン2というホルモンと結合して活性化し、心不全につながる心臓の肥大化や心筋の線維化を促すと考えられてきた。

 だが、遺伝子操作でアンジオテンシン2を作れなくしたマウスでも、心筋に血液が十分に送られない心筋梗塞や、全身に血液を送り出すのが大変な高血圧の状態にすることで、心筋に負荷を加えると受容体が活性化し、心臓の肥大化が起きた。受容体構造を固定するタイプの受容体阻害薬を使うと、負荷を加えても受容体は活性化されず、心臓も肥大化しなかった。

 小室さんは「負荷が加わると、心筋は引き伸ばされる。細胞表面にある受容体は、こうした物理的な刺激でも構造が変わり、活性化するようだ。防止には、受容体の構造を変えないようにする薬が重要だ」と話す。心筋梗塞や高血圧など負荷要因があっても、受容体の変形を抑える薬を使えば心臓の肥大や線維化を予防できる可能性がある。


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