ピアノ作品


 世界的作曲家の故武満徹がデビュー前に書いた二つのピアノ作品の自筆譜が発見された。ゆっくりした曲想に静謐(せいひつ)な美をたたえた作風で「レント(ゆっくりと)の作曲家」とたたえられたが、彼の作品では珍しい「アレグロ(速く)」の指定が見られ、10代の模索ぶりがうかがえる。2作品は作曲家・高橋悠治の演奏で録音され、今月末発売の小学館武満徹全集」(全5巻、CD58枚)の最終巻に入れられる。

 2作品は「2つのメロディー」(48年6月)と「2つの作品」(49年11月)。「武満徹全集」編集部が作品を発掘する過程で、妻の浅香さんが日本近代音楽館に寄託した遺品から見つかった。

 これまで武満徹の初めての作品は18歳の時のピアノ曲「ロマンス」(49年6月)とされていたが、「2つのメロディー」は17歳で書いたことになる。

 「2つのメロディー」は1曲目の途中までしか書かれておらず、演奏時間にして1分13秒。アンダンテ(歩くような速さで)で小節の切れ目がない。3楽章からなる「2つの作品」も未完で2分47秒。

 注目されるのは「2つの作品」にアレグロが含まれていること。生前「アレグロで書こうとしたがうまくいかない」と述懐し、代表作「弦楽のためのレクイエム」などで、レントの美しさを追求した彼の作品からは想像できない、エネルギーの奔流が感じられる。

 武満徹は30年東京生まれで、独学で作曲を学び、50年にピアノ曲「2つのレント」でデビュー。その後、大作曲家ストラビンスキーの称賛を得て世界に飛躍した。勅使河原宏監督の「砂の女」、黒澤明監督の「どですかでん「乱」などの数多くの映画音楽でも活躍した。



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