<カイコ>二酸化炭素摂取が判明 

 カイコやクモが糸を作る時、大気中から二酸化炭素(CO2)を取り込んでいることを、農業生物資源研究所茨城県つくば市)と科学技術振興事業団が実験で明らかにした。大気中のCO2を取り込めるのは光合成ができる植物や一部の微生物だけという生物学の常識を覆す発見だ。

 カイコは桑の葉を大量に食べて体内に蓄えたたんぱく質を使って糸を作り、それを材料として作った繭(まゆ)の中でサナギになって過ごす。

 同研究所の馬越淳研究員らのグループは繭糸と桑の葉に含まれる炭素の同位体の割合が少し違うことに気づいた。食物だけを材料に繭糸を作っていれば同位体の割合も同じになるはずで、割合が違うのは大気中からも炭素を取り込んでいるためと推測した。

 大気中の炭素には1%程度しか含まれていない同位体の割合を大幅に高めた容器にそれぞれ、4種類のカイコとジョロウグモを入れて繭を作らせた。できた繭は同位体の割合が通常の大気中で作らせた繭に比べて2〜7%多く、食物から取り入れる炭素の量の1000分の1程度という微量ながら、大気中の二酸化炭素も糸に取り込んでいることがわかった。

 馬越研究員は「進化の過程で大気中に二酸化炭素が大量にあった時代には、今よりももっと利用していたかもしれない。研究を進め、生物が巧みに生命を維持していくための未知のメカニズムを解明していきたい」と話している。【中山信】(毎日新聞)

id:nand:20040406