language 文化審国語分科会が報告書

 漢字政策の問題点を検討してきた文化審議会の国語分科会(阿刀田高会長)が2日、「情報化時代に対応するために、常用漢字のあり方を検討すべきだ」との報告書を同審議会に提出した。パソコンなどの普及で、日常的に使用する漢字が急激に増えた現実を踏まえ、新たな漢字政策の立案を求めている。新年度から同分科会で審議が始まる見通し。常用漢字の枠を拡大するのか、新たな枠組み作りを目指すのか、漢字政策が転換点を迎えた。

 常用漢字は「生活における漢字使用の目安」として81年に制定され、1945文字。印刷用の活字を想定したもので、音訓と字体を示している。法令や公用文はその範囲内で表記し、学校教育でも学習の目安となっている。新聞など多くのメディアも原則として従ってきた。

 だが、パソコンや携帯電話などの情報機器には日本工業規格(JIS)の第1水準と第2水準を合わせた6355字がおおむね搭載されており、常用漢字でない漢字がワープロや電子メールで日常的に使われるようになっている。

 音訓や字体でも常用漢字表外の使用が増えている。育(はぐく)む、応(こた)える、関(かか)わるなどは相当に普及。人名では國や澤などの使用が広がっている。

 また、常用漢字には人名や地名などの固有名詞に使われる漢字は含まれていない。異字体が多いうえ、「固有名詞は手書きするものという前提だった」(文化庁国語課)からだという。大阪の阪も岡山の岡も常用漢字ではない。

 報告書は「常用漢字が漢字使用の目安として十分機能しているのか検討が不可欠だ」と指摘する。また、急激に減った漢字の手書きを「絶対に捨ててはいけない日本の文化」として再評価することを求めている。

 さらに常用漢字文化庁、JIS規格は経済産業省人名用漢字(2928字、常用漢字を含む)は法務省と担当省庁が分かれている現状を、「総合的な漢字政策の構築が必要」と提言している。

 このほか、「適切な運用ができない状況にある」敬語について、実際の使用場面を想定した「具体的な指針の作成」も唱えている。

  • <小林一仁・桜美林大名誉教授(国語教育学)の話>

 情報機器の普及で難しい漢字も簡単に使える環境が整った。出版物もルビを振った漢字を使うことが一般化し、新聞で4500字、雑誌では8000字も使われている。目安としての常用漢字はすでに解体している。報告書は、そうした現状を追認したものといえるだろう。だが、漢字の使用を完全に自由化すると社会が混乱するのは明らかで、何らかの歯止めは必要だ。常用漢字の字数や字体を増やすとか、公文書や学校教育を想定して新たな目安を作るとかいったことが考えられるが、難しい議論になるだろう。 (02/02 11:24)