Xマスの祝い方巡り、米で議論過熱

 【ニューヨーク=勝田誠】クリスマスを堂々と祝うべきか、それとも、非キリスト教徒への配慮から、慎むべきか――。キリスト教徒が国民の8割強を占める米国で、「12月のジレンマ」と呼ばれる議論が例年以上に過熱している。

 「政教分離」と「信教の自由」を憲法修正第1条で定める米国では、クリスマスの宗教色はかなり薄まっていた。政府庁舎など公共施設ではクリスマスの飾り付けが見られない。イリノイ州の小学校は昨年から、スクールバスの中でクリスマス曲を流すのを禁じた。

 クリスマスツリーについてさえ、「宗教的なシンボル」として「私企業のオフィスなら良いが、公共の場では禁止」(フロリダ州パスコ郡)や「コミュニティーツリーと言い換えるべきだ」(カンザス州ウィチタ市)といった、日本人にはにわかに信じがたい条例もある。

 今年は大手デパート、メーシーズが顧客への宣伝で「クリスマス」の表現を取りやめたことから、ついに不買運動が起こった。不買運動「メリー・クリスマスを救え」創始者の1人、カリフォルニア州サクラメントのマニュエル・ザモラノ(56)は「26日になれば手のひらを返したかのように『アフター・クリスマス・セール』をやるくせに『クリスマスは禁止』かね。政治的公正(ポリティカル・コレクトネス)を追求しすぎて、大半の消費者を敵に回している」と憤る。

 これに対し、メーシーズの親会社、フェデレーテッド・デパートメント・ストアーズ(オハイオ州シンシナティ)のキャロル・サンガー副社長は「1950年代のアメリカではない。非キリスト教徒もいれば、宗教と距離を置く世俗的な人々も多い」と主張するが、2万人以上が参加する運動の広がりは脅威でもある。こうした騒ぎや訴訟は、今年に入って700件以上にのぼるとされる。

 ブッシュ大統領再選に影響力を持ったキリスト教右派ら保守派は「行き過ぎ」に猛反発し、巻き返しを図る。宗教関係者は毎日、ラジオのトークショーなどで批判を展開。「史上最悪と言えるほど過激な検閲だ」(宗教団体、「米国・法と正義センター」)といった主張は、「どこかおかしい」と感じる市民に浸透し、不満層を奮い立たせる。

 宗教問題に詳しいラザフォード研究所のジョン・ホワイトヘッド所長は「ハヌカユダヤ教の神殿清め祭)、クワンザ(黒人の収穫祭)は認められているのに、なぜクリスマスはいけないのか。逆差別されていた多数派(キリスト教)が怒り、振り子は逆方向に戻っている。このような不満に宗教右派の存在が火をつけた」と、例年になく騒がしいクリスマスを分析する。

(読売新聞) - 12月23日23時25分更新