「Winny事件」初公判

 インターネットを通じて映画や音楽のファイルを交換できるパソコン用ソフト「Winnyウィニー)」を開発して著作権侵害を助けたとして、著作権法違反(公衆送信権の侵害)の幇助罪に問われた東大大学院助手金子勇被告(34)=東京都文京区根津2丁目=に対する初公判が1日午前、京都地裁氷室真裁判長)で始まった。著作権侵害事件でソフトウエアの開発者が刑事責任を問われるのは初めて。金子助手は「Winnyは技術的な実験として開発・公開したもので、著作権侵害行為を手助けする意図はなかった」と述べ、無罪を主張した。

 起訴状によると、金子助手は自分が開発したWinnyをインターネットのホームページに公開し、だれでも自由に入手できるようにした。これにより、群馬県高崎市の風俗店従業員(42)=同法違反罪で公判中=らが昨年9月、Winnyを使って映画やゲームソフトを不特定多数のネット利用者に送信できるようにし、著作権の侵害を手助けした、などとされる。

 弁護側は「起訴状ではWinnyが違法であるとする根拠やWinnyの開発が著作権法違反幇助となる理由が明らかにされていない」などと検察側に釈明を求めた。

 その後、金子助手は用意した意見書を朗読。「技術の進化は止まらないし、止めようとしても止まるものではない。技術そのものを有効活用する方向を目指すべきだ。ソフト開発が犯罪の幇助に当たるという前例が作られれば、開発者には大きな足かせになってしまう。私は無罪です」と述べた。

 検察側は冒頭陳述で、「被告は現行の著作権法は時代遅れだという疑問を持っていた」と指摘。犯行の動機について「匿名性の高いファイル交換ソフトを作れば、警察に摘発されることがなく、著作物の提供者は新しいビジネスモデルの開発に着手することになると考えた」と述べた。

 さらにWinnyの利用実態のほとんどが著作権のある音楽や映像の違法コピーであることを指摘したうえで、被告は著作権法違反を増長させることを意図していたとした。

 弁護側も午後から冒頭陳述の朗読を始めた。「実際に著作権侵害をした被告らとは面識もなく、利益も得ていない」などとして、ソフトの開発は罪にあたらないと主張し、インターネットを通じてさまざまなファイルを共有できるWinnyの有用性を強調するなど、起訴の不当性を訴える方針だ。

 コンピューターの利用者同士がネットを介して音楽や映像などのファイルをやり取りする。国内の利用者は推定240万6千人に上るとみられる。ウィニーはP2P(ピア・ツー・ピア=個人対個人)と呼ばれる技術の一つで、利用者が手持ちのファイルを直接検索し合う仕組み。匿名性が高く、違法コピーの流通による著作権侵害の温床になっているとの指摘がある。Winny利用者が感染するコンピューターウイルスによって京都府警の捜査関係書類が流出する不祥事も起きた。 (09/01 13:50)



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