NASA「火星は生物生存に適した」 


 米航空宇宙局(NASA)は3月2日、火星探査車オポチュニティーの着陸地点に、かつて大量の水が液体の状態で存在していたと発表した。周辺の岩石の構造や化学的な特性から結論づけた。時期や期間は不明だが、「生物の生存に適した環境だった」と見ており、火星の有人探査を求める声が強まりそうだ。

 オポチュニティーは、1月25日の着陸直後に見つけた、板状の岩石がたくさん重なった地点で、顕微カメラやX線分光計などにより岩石の成分や構造を調査してきた。

 その結果、水とのつながりを示す成果として、岩石に、

  • ミョウバン石など各種の硫酸塩鉱物が高濃度で含まれる、
  • 多数の細長い空洞が無秩序に走っている、
  • 小さな球状の物体が散在している、

 といった特徴のあることが分かった。

 NASAは「地球の岩石が今回のような高濃度の無機塩類を含む場合、水中で形成されたか、形成後、長く水につかっていたことを示す」と説明。鉄ミョウバン石の存在は、酸性の湖か温泉のような環境だったことを示唆しているという。

 細長い空洞は、塩水の中で無機塩類が結晶化した後、脱落してできたと見られる。その空洞に再び塩水が浸入し、無機物が雪だるま式に固まって球状の物体ができた可能性があるという。

 過去の火星探査機の観測で、大量の水が流れたらしい地形や、地下水がしみ出したような跡、地表近くの氷の存在など、火星にかつて大量の水が存在していたことをうかがわせる「間接証拠」が見つかっていた。NASAは、今回の一連の分析結果は最も強力な証拠だとしている。

 主任科学者のスティーブ・スクワイアーズ教授(コーネル大)は「これで、ジグソーパズルのそれぞれのピースが、あるべき場所に収まった」と話した。

 今のところ、生物の存在を示す証拠は見つかっていないが、同教授は「(今回の調査地点は)過去のある時期、生物の生存に適した場所だった」と述べ、生命が誕生したとしても不思議ではないとの見方を示した。

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