仏政府が観光奨励策


 夏は数週間のバカンスをのんびり楽しむのがフランス人――そんな「常識」とは裏腹に、フランス人(15歳以上)の37%がバカンスに出かけないことが仏政府の調査で明らかになった。経済上の理由やライフスタイルの変化に加えて、高齢者や障害者など「バカンスに出かけない層」の存在も指摘される。経済への悪影響を心配する仏政府は、「フランス人はもっとバカンスに出てほしい」と国内向けの観光キャンペーンに乗り出した。

 仏観光省は、仕事や治療以外の目的で自宅以外の場所で4泊以上を過ごすことを「バカンス」と定義している。同省の調査で、02年に1700万人がバカンスに出かけず、1100万人が3泊以下の小旅行にも出かけなかったことが判明した。特に低所得者、高齢者、障害者、学生、子供の多い家庭でバカンスに出かけない比率が高かったという。

 別の政府系機関の調査では「バカンスに出かけない理由」として、半数が「お金がないから」と回答。長期の外出に介助が必要なためバカンスに出ないという高齢者や障害者もいた。

 この結果にドロビアン観光相は「バカンスに出かけないフランス人が多すぎる」と不満顔。フランスは外国から毎年7500万人が訪れる観光大国だが、米同時多発テロ後の世界的な観光客の落ち込みに加え、イラク戦争で米仏関係が冷え込んだ余波で“ドル箱”だった米国人観光客が急減。となれば自国民に「穴」を埋めてもらおうと、バカンス奨励策をこのほど打ち出すことにした。

 具体策の一つが「旅行小切手」の拡充。仏企業が福利厚生策の一環として休暇を取る従業員に支給するもので、旅行代金に充てることができる。これまで大企業にしか普及していなかったが、今後は中小企業にも支給制度の採用を促すという。このほか、お年寄りの旅行を支援する制度や、障害者に優しいバリアフリーの環境を整えた観光地に与えられる賞の創設も決めた。

 もっとも、フランス人の間では最近、夏に長期のバカンスを取るかわりに、週末などを利用し、短期の旅行に数多く出かける傾向が広まるなど、ライフスタイル自体が変化していることを指摘する声もある。 (08/08 20:56)



パリの屋根裏部屋にて

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